建設コンサルタント業界のМ&A動向

建設コンサルタント業界のМ&Aの歴史」より 続きます。

2000年代より始まった公共投資規模が半減した建設不況時において、経営破たんした企業をМ&Aに買収し急拡大と大きな成功を収めた建設コンサルタント企業と、そうでない企業があったわけですが、М&Aにより急拡大した企業を横目で見ていた他の建設コンサルタント会社は、М&A仲介会社の営業を受けて、「うちもМ&Aを始めよう」と考えるようになりました。

そして、現在、多くの建設コンサルタント会社が、成長戦略の一つとしてМ&Aを掲げるようになっています。

ところが、もう建設業界の大不況は終わり、基本的には好景気です。
「実績も多く、優秀な技術者がたくさんいる経営破たんしかけの中堅レベルの企業」なんて会社が、譲渡希望(売り)案件として出てくることは、めったにありません。
また、仮に出ても、企業価値が高く、他の買い希望候補も多いことから、この中で買い手として勝ち残ることは、非常に困難な状況です。

つまり、建設不況時の、業績と技術力のある中堅企業が、格安で買収できた黄金期とは完全に状況が違うということです。

現状において、М&Aによる建設関連業の譲渡(売り)案件は、大廃業時代と言われることから分かるように、経営者が高齢化し、かつ親族等に承継できない中小地場クラスの案件が中心です。

大手、準大手クラスのМ&A動向

大手、準大手クラスの建設コンサルタントは、売上数億規模の中小企業を買収することに、あまり魅力を感じない会社が多いようです。
売上100億の会社が、売上3億の会社を買収しても、企業規模の拡大へのインパクトを感じられないことがその理由です。

売上10億以上の会社が、売り案件として出てくることが少なく、出てきたとしても経営が本当にダメな会社か、良い会社であれば、大変競争が高く値段が高くなります。

そこで、大手、準大手クラスは、海外企業を買収することが多いように思います。
日本の建設コンサルタント会社が、海外企業を買収して、果たしてコントロールできるのだろうか、明確なМ&A後の経営戦略があるのか疑問に感じるところです。
案件を持ち込む仲介会社や会計コンサル等の口車に載せられているような気もしないでもないです。

М&Aにより、連結ベースで会社の総資産や、総売上は簡単に増大します。経営者は企業規模の急拡大の実績をアピールできるのですが、企業において大切なのは長期的な利益です。М&Aの8割は失敗していると言われていて、基本的にはコントロールのできない会社を買うことは、大きなリスクが伴います。

まあ、5年程度すれば、買収したことの評価が出てくるのではないでしょうか?

中堅レベルのМ&A動向

 現状の売り案件の多くは、事業承継者の見つからない全国の中小規模の企業になりますが、そうした、会社を積極的に買収しているのは、主に、中堅クラスの企業、売上規模で、5億~数十億円位の、地方であれば地場大手クラスになります。
 
 中堅クラスの企業というのは、大規模資本の関連会社か、オーナー企業に分かれますが、この中でオーナー企業というのは、経営と所有(資本)が分離されていないため、トップダウンの強い意思決定力を持っています。
 特に地方地場大手クラスとなると、地域に密着した長年の実績、優秀な技術者を抱え、地域のブランドであることから、人員採用する力もあります。
 当然、投資余力も持っています。
 二代目、三代目など、経営者が若く、企業を成長させる意欲が高い企業もあります。

 上記のような、「地場企業の経営ノウハウ」、「投資余力」、「意思決定力」、「成長意欲」を併せ持った企業にとっては、成長戦略としてМ&Aは欠かせないものとなるでしょう。
 そして、各地域で信頼と実績を持つ中小クラスの同業者の譲渡(売り)案件というのは、大変魅力的に映るでしょう。

 М&Aにより、新市場開拓と、経営規模の拡大、人材獲得等が達成できます。
 また、中小クラスの企業のМ&Aを繰り返すことにより、経営規模も拡大を続け、経営ノウハウも蓄積され、シナジー効果も高まっていくでしょう。
 長期的にみて、海外企業を買収する戦略と、国内中小クラスの買収する戦略との間にどのような結論がでるのか、楽しみではあります。
 
 現状動向としてこんな感じです。

 個人的には、今後、急成長を遂げる建設コンサルタントは、М&Aによる拡大戦略に成功した企業から生まれると考えています。

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